第132話 ミサちゃん的にはワクワク |
裏密が振る舞ってくれた夕食は、見た目はともかく味は抜群!! その後は風呂にも浸かれてリラックス♪2人の体力はすっかり回復した。 その夜。 京一があてがわれた部屋をコンコンと遠慮がちにノックしたのは龍麻だ。 「京一…」 「どうしたよ、ひーちゃん。眠れねーのか?」 「うん…。何かあまりに部屋が血みどろで落ち着かないんだ(汗)」 「…俺んとこも異常だと思ったが、ひーちゃんの方がひどかったか」 「京一の部屋は…? うっ…こ、これは…!」 京一を押しのけるようにして部屋に入った龍麻はザッと青ざめた。 龍麻があてがわれた部屋も赤を基調とした「血みどろ模様」の悪趣味レイアウトだったが、京一部屋は暗い色調ながら天井や壁紙、ベッドのシーツに至るまで、全てが「爬虫類模様」で統一されていたのだ! 「ここで寝たらヘビまみれな夢見そう…」 「まったくだぜ。俺、爬虫類ってダメなんだよなー。裏密の奴、知ってて嫌がらせしたんじゃねーだろうな」 「え? でも京一にそういう苦手があるなんて何か意外だ…」 「そうか? 別にヘビに触れねーとか、すげー苦手とかってことじゃねェんだが…昔、知り合いで爬虫類っぽい粘着系の雰囲気持ってる女医がいてな…。そいつが幼気な少年時代の俺に、ちょっとしたトラウマを植え付けやがったわけよ」 「トラウマ?」 「……ま。あんま深くは突っ込まねえでくれ。面白ぇ話でもねーし」 「ふうん…分かった。ところで京一、俺、今夜ここで寝てもいいか? あの血みどろ部屋で一晩過ごすのはちょっと無理そうだから」 「ああ、いいぜ。俺は血みどろの方がマシだし。交代しようぜ」 「え」 「ん?」 京一の言葉に龍麻がぴたりと止まり、それにあわせて京一も止まった。 その沈黙を先に破ったのは龍麻だ。 「えっと…。京一、行っちゃうの?」 「は? そりゃ…ひーちゃんがここで寝るなら」 「一緒に寝ようよ!」 「!!」 龍麻の申し出に京一はフリーズした! しかし龍麻は構わない! 「だって折角会えたのに! 俺、京一ともっと話したいし…。それに、いくら裏密さんの家とは言っても、やっぱりこの環境で独りってのは心細いんだ」 「う…」 「それに京一だって、この家に入る時は『絶対独りきりにはなるな』とかって言ったじゃないか。それなのに、京一の方が1人でさっさと部屋行っちゃうし…」 「そ、そりゃあ…俺だって、ひーちゃんのことは心配だったが…!」 「だったが、何だよ!?」 「一緒に寝るのは……そりゃ、まずいだろ? ほら、いろいろ…」 「いろいろって!? 何で!?」 龍麻はぐいぐいと京一に迫った。まるで誘い受けである(爆)!! しかし京一は、そんな嬉しいはずの展開に対して思い切り引き気味である。本来ならば嬉しいはずの展開なのに、いざ舞い込んできた幸運にらしくもなく怯んでしまったのだろうか!? 「馬鹿ッ! んなわけあるかッ!!」 「へ?」 「あ! ち、違う! 今の『馬鹿』はひーちゃんに言ったわけじゃねえ! くだらないナレーターを入れる作者の声に…!」 「何訳分かんないこと言ってるんだよ、京一! やっぱり俺と寝るのは嫌なのか? 疲れているから俺と余計な話はしたくないとか…」 「だから違う! んなわけねえ、断じて! 俺だってひーちゃんと一緒に寝てーよ!」 「本当?」 「ああ、間違いねえ。100%一緒に寝てえ!!」(きっぱり) 「良かった〜」 「うっ…。だからそんな無邪気に喜ばれても、俺は困んだけど…」 「え?」 「だ、だからな…。さっき裏密から詳しく聞いたが、ひーちゃん、お前には呪いがかかってんだよ。それも超強力なやつがな」 「う、うん…。それは俺も分かっているけど…」 「だろ。しかもそれは、残念ながら魔法とは縁遠い俺には太刀打ちできねえ類のもんだ。呪いが厄介なもんだってことは、俺もこれまでの修業で結構理解してきたつもりだからよ。折角ひーちゃんと再会できて、これからひーちゃんのこときっちり守ってやろうって思ってんのに、その矢先に怪我したくねーだろ。俺だってきついんだぜ、このオイシイシチュエーションを蹴っちまうのは…(ぼそり)」 「でも俺の呪いって、誰かと一緒に寝るだけでその人に災厄がかかるのか? ……まぁ確かに、以前にも天童が危ないようなこと言っていたし、実際誰かと一緒に寝た経験はないから分かんないけど」 「……まぁ、ただ一緒に寝るだけなら、多分大丈夫だとは思うが」 「じゃあ、どうしたら呪いがかかるんだ?」 「そりゃ…その…ひーちゃんの……貞……を奪ったら…じゃ、ねえの?」 「え? 俺の何だって?」 「いや、何でもねえッ【焦】! と、とにかくッ! いくらこんなムードもへったくれもねえ部屋とは言え、ひーちゃんと2人っきりで夜を過ごすのはやべえ! 完璧に! 俺の理性がやべえ!」 「もう、何だよ…! 全然、意味が分からないよ…! 結局、京一は俺と一緒にいるのが嫌なんだな!?」 ずっと会えなかった京一と再会出来た時は、独りきりの心細さとも相俟って本当に嬉しかったのに。 あの木の上から登場した京一は本当にカッコ良かったのに。 龍麻はその京一に拒絶されたことで、みるみる真昼の朝顔のようにしょぼくれてしまった。←でもそんな顔も可愛い(※京一ビジョン) 「ひーちゃんと一緒にいるのが嫌なわけないだろ…! 俺だって辛いんだよ!」 「じゃあ一緒に寝ようよ! 俺、そんな寝相悪くないぞ!? 京一にたくさんスペースあげるから!」 「だからそういうことじゃ〜ッ!」 「う〜ふ〜。扉を開けっぱなしでどうしたの、お2人さん〜」 部屋の真ん中でぎゃいぎゃい言い合いしている声が響いたのだろうか。すでに自分も就寝の用意をしていたのか、パジャマ姿の裏密が、いつもの不気味人形を懐に抱いてやって来た。 「ひーちゃん〜。主人公は魔王を倒してEDを迎えるまで、誰とも結ばれてはいけないのよ〜。だからお部屋も別々にしたのに〜」 「お前…さっきは俺が美里の呪いにやられないようにとかって言ってなかったか(呆)」 「うふ〜。それは京一君〜へ〜の方〜便〜」 「裏…じゃなかった、ミサちゃん。どうしても俺は京一と一緒に寝ちゃ駄目なのか?」 「そうね〜。でも主人公のひーちゃん、み〜ずか〜らが〜。どうしても京一君と閨を共にしたい〜とい〜うな〜ら、仕方ないわね〜」 「お、おい、裏密! テメエ、んなこと言って、俺を美里がかけた呪いの業火で消すつもりか!?」 「えっ…。美里の呪いって……本当に、そんなにすごいの…?」 「う〜ふふ〜。そうよ〜。女の〜嫉妬は〜怖いもの〜。で〜も、そうね〜。強〜力な賢者を、持ってす〜れば〜、そ〜のの〜ろい〜も、解〜くこ〜とが出〜来るかも〜」 「え!」 「おい、ホントかそりゃ!」 裏密の言葉に2人がいっぺんに飛びついた。 裏密は相変わらずにたりにたりと笑いながら、「それじゃあ〜」と言ってくるりと踵を返し、2人を表の玄関まで誘導した。 「な、なに…?」 「おい、まさか、今からその偉い賢者とやらを探してこいとか言うんじゃねーだろうな…」 「違うよ〜。賢者はもういる〜。ミサちゃんは苦手なタイプだから〜無視しようかと思っていたけど〜。2人が望むなら、どうぞ扉を開けてちょうだい〜」 「……どういうこと?」 「このドアの向こうに賢者がいるってか? 都合よく?」 にわかには信じられない話だったが、それでも龍麻と京一は顔を見合わせた後、やがて頷いた。 よくは分からないが、龍麻にかかっている美里の呪いを解ける賢者がいるというのなら、それは願ったり叶ったりだ。そうすれば晴れて2人は一緒に寝られるのだから!!(※でも単に「同じお布団で眠る」って意味なんだけど、2人の間では解釈が微妙に違う) 「よし、じゃあ、偉い賢者さん、いらっしゃい!!」 「何だひーちゃん、その掛け声は…」 「え? いや、おまじない的に…」 龍麻の勢いこんだ言葉に京一はツッコミを入れ、龍麻も照れたように笑ったが――。 「……夜分遅くに失礼」 その開いた扉の先に立つ、長身の青年を認めた時。 「……あ!!」 龍麻は驚きで暫し開いた口が塞がらなかった。 京一はそんな龍麻に怪訝な顔で首をかしげる。 裏密はにたり顔が止まらない。 「……龍麻?」 「壬生!?」 「本当に…龍麻かい? 呪いの影響が少ない場所を探していたら、この家が見えたので…」 「誰だ?」 「壬生! 壬生だ! すごい! 京一の次は壬生に会えるなんて!!」 龍麻は興奮したように叫んだ。 目の前に現れたのは壬生――秋月で初めて出会い、ローゼンクロイツ城の攻略の際に力を貸してくれた頼もしい賢者である。 そして以前にも龍麻の呪いを解いてくれたことのある人物。 しかし、己も呪いにかかっていると話していた壬生紅葉。 「龍麻。どうして君がここに」 「壬生こそ! でも嬉しいよ! 壬生、久しぶり!!」 「……何かすげー嫌な予感がするぞ(汗)」 ため息交じりに呟いた京一の言葉は、しかしはしゃぐ龍麻には聞こえない!! 壬生紅葉が現れた!!! 《現在の龍麻…Lv22/HP170/MP120/GOLD0》 |
【つづく。】 |
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