第147話 話を進めたいのさ 

  改めて、壬生が龍麻のパーティの一員となった!

  ンチャチャチャチャチャチャチャ〜ンチャチャチャチャチャチャチャ、チャラララ、チャラララ、ラ〜ラ〜!!

「はい〜じゃあ〜話もまとまったところで〜」
「うおっ!? も、もう、裏密さんっ。急に至近距離で後ろに立たないでよっ」
「ぶう〜。これ〜、京一君や壬生君がやったとしたら〜絶対ひーちゃん怒らないのに〜」
「何言ってるんだよっ、誰にだって驚くし、やめてって言うよ、俺は!」
「どうだか〜〜〜〜」

 珍しく恨めし気な様子で裏密は言い、しかし顔は相変わらず不気味な笑みをたたえたまま、一枚の羊皮紙を差し出した。
 何となくそれを受け取った龍麻は「これは?」と尋ねながら首をかしげる。

「このサクラ王国と〜その周辺のマップだよ〜。もうね〜〜、ひーちゃんに全部探索を任せておくと〜、お城中の人たち全員に聞きこみして〜〜、街の人にも全員声かけて〜〜、おうち覗いて樽叩き割ってタンス開けまくってってやっているだけで〜〜1週間経っちゃうから〜〜」
「お、俺は人の家のタンスなんか開けないよっ。それはDQルールでは当然って前言われたけど!」
「でも〜〜〜、どこへ行って何していいか分からないから、うろうろモタモタしちゃうでしょ〜〜〜?」
「うぐっ…。そ、それは、仕方ないじゃん…。この国のこと、俺何にも知らないし」
「だから、行く所チェックしておいてあげたよ〜〜」
「へ?」

 龍麻が言われて改めて地図を見ると、あからさまに「ここへ行け」とでも言うべき、赤チェックが地図の端にぐりぐりと描き添えられていた。……そのマークが「ドクロ」なのが何とも気にはなるけれど……。

「あのね〜〜、さっき、おじいちゃんの時に話そうと思ってたんだけど〜〜。呪いって言うのは、元を断たないといけないのね〜〜」
「もとを?」
「この国にはね〜〜すでに途方もない数の呪いが散りばめられている〜〜。それはタカコ王の力を持ってしても抑えられない〜〜。サクラの加護があってもギリギリのところ〜〜〜。でも〜、はじめにこの国を呪った元を断てば〜〜、他の呪いもその力は弱まるはず〜〜〜」
「そ、その呪いの元がこの、地図にあるこの場所にあるんだ!? すごいっ、何で裏密さんにそんなことが分かるの!?」
「占い〜〜〜」
「え」
「というのは、本当半分、嘘半分〜〜」
「う、裏密さん…」

 龍麻がたらりと冷や汗を垂らすと、傍にいた壬生がその地図を覗きこみながら「でも」と口を開いた。

「あながち見当違いとは言えないかもね。ここは僕も行こうと思っていた場所だから」
「え、本当?」
「呪いの元を断つという考えも基本的に正しい。この場所にそれがあるかはまだ分からないけど」

 壬生に言われ、龍麻は改めてその地図に描かれた場所をまじまじと見つめた。

「ここ…中心街とは少し離れているみたいだけど、でも、この絵を見るに、誰か大金持ちの敷地みたいだ…というか、この絵はお城だよね? お城があるの? 王様が住むこのお城以外にまたお城…?」
「その辺りは、この国一の名門貴族が有している土地だからね。次代の王を同一の血族から選ばないサクラ王国では、かつて国の環境を整えたことに貢献したこの家門からも王が輩出されたことがある。だからこの地図の絵柄も、かの地を城で描いているのだろうね」
「そうなんだ…。王政?なのに、別の家から王を?」

 龍麻は村で焚実と自宅学習はしていたけれど、社会は苦手だった! だからこの国の…否、世界の成り立ちを知らないし、各国の仕組みもよく分からない。
 壬生は自分と同じくらいの年だろうに、もう賢者様だし、いろいろなことを知っていて頭も良いし、何だか自分とは全然違うなと龍麻は思った。

「………」

 だからこそ、改めて疑問を抱く。
 壬生はこの国へ来て、何をしようとしていたのだろうかと。たまたま再会して、一緒に呪いを祓う約束をしてくれたけれど、壬生にも何か目的があったのではないだろうか? 勿論、以前にも言っていたように、各地の呪いを祓いつつ、自分自身にかかった呪いを解くということが最大の目的なのだろうけれど。

「あのさ、壬生…。……っ」

 けれど、言いかけて龍麻は口を閉ざした。そう言えば壬生のことは、壬生が自ら話してくれれば聞きたいけれど、龍麻からはあまり事情を訊かないようにする、と。壬生自身にも伝えていた。だから、訊きたいことはあるけれど、やっぱり今はやめようと思った。

「龍麻?」
「あっ」

 壬生が不思議そうに問い返してくるので、龍麻は慌ててかぶりを振った。
 そしてごまかすように地図を指さす。

「じゃあ早速ここへ行ってみようよ。偉い貴族様?の所だから、何だかちょっと緊張するけど」

 龍麻の言葉に、しかし壬生は淡々と返した。

「この家はすでに断絶しているよ」
「……え!?」
「今この領地を占有しているのは、サクマ組の連中だから」
「え、ええー!?」

 壬生はしれっと言ったが、龍麻は普通に驚いてしまった。ただの…と言っては何だが、いかにもヤクザなあの人たちが、昔は王様にまでなった名門貴族の城に住んでいるだなんて、常識的に考えてありえないのでは…大体、そんなことをよくこの国の人たちは許しているなと思ったのだ。

「それだけ巨大な力を持っているってことか…あのサクマ組の人たちが…」
「棟梁がサクマだからね」
「???」

 壬生の言葉の意味が龍麻には分からなかった。しかしそれを聞き返す間もなく、いつまで経ってもその場を発とうとしない龍麻にしびれを切らせた裏密ミサちゃんが、「ほらやっぱり〜〜」などと言いながら、どんどんと背中を押し、先を急がせ始めた。どうやら作者と手を組み、少しでも早く話を進めようとしているらしい!
 龍麻と壬生はとる物もとらず、城内探索も早々に切り上げて、城を出た!

(京一…どこ行ったのかな…)

 城を出る前に、城の家臣や門兵に尋ねたところ、京一はすでに城を出たようだった。もしかすると待っていてくれるかもしれない…などと思っていたが、これはいよいよ本当に怒っているのかもと、龍麻は再び暗い気持ちになった。

(それでも…)

 それでも龍麻は、勇者である。一度引き受けた仕事は完遂しなければ。

「よし、サクマ組のいる領地へ行こう!!」

 龍麻は自らに気合を入れるべく、声を上げた。



 以下、次号…!!


 壬生は現在龍麻に対して好感度が高く、パーティの一員でもあるが、まだ正式な仲間ではない!壬生が本当の仲間になってくれるかは、まだ分からない…!!(念のため再説明)
  《現在の龍麻…Lv22/HP160/MP120/GOLD0》


【つづく。】
146へ148へ