第149話 勇者の必殺技 

  くさった死体が大量に現れた!!

「う、うわああああ!!!!」

 龍麻はトラウマを刺激された!! 
 龍麻はスピリチュアルアタックにより、5のダメージを受けた!!

「リ、リビングデッド佐久間…!?」
「龍麻、動かないで!」

 壬生が闇雲に逃げ出そうとする龍麻を素早く制し、ボミオスを唱えた!
 ただでさえ遅いくさった死体たちの動くスピードがさらに下がった!!
 壬生はさらに炎系の魔法、メラゾーマを唱えた!! それは敵ではなく、自分たちの周辺のフィールドに向けて放たれた! 炎が龍麻たちを取り囲む。それはくさった死体たちの接近をさらに遅らせた!!

「龍麻、落ち着いて!!」
「あわわわ…!」

 壬生はその間に動揺しまくる龍麻の両肩をがしりと掴み、激しく揺さぶった。

「くさった死体を見たのが初めてなのかい!? あれもモンスターだよ、数は多いけど、大して攻撃力は高くない!! 簡単に倒せるから怖くないよ」
「ち、ちがっ…! リビングデッド佐久間が…!」
「リビングデッド? リビングデッドは確かにくさった死体の上位モンスターだけど、今ここにはいないよ!?」
「あ、あれ、何回倒しても復活してくるんだよっ。そ、そ、それで、すぐ俺に…チュ、チューしようとするんだ!」
「……は?」

 龍麻の叫びに壬生の動きも止まった。龍麻の言葉を理解するのに時間がかかる。

「龍麻、一体何の話?」
「死体だけど、死んでないんだよっ。ずっと追いかけてくるんだ! 俺、そういえばこの国に来た時も佐久間に襲われたし! もしかしたら、この死体も佐久間と関係あるのかもっ。 だって顔も、何かみんな似てるし! くさってるけど!!」

 龍麻はぶるぶる震えながらも、炎の向こうでうごめいている死体たちにちらちらと視線を向けた。 

「……! そう……似てる……」

 そして龍麻は、忙しなく口を動かして説明しているうちに、段々と冷静になってきた。壬生が作ってくれた炎の結界(?)のお陰で、一時的にでも安全が確保されたことも大きい。両手を前方へ掲げながら、ひたすらヨロヨロとこちらへ来ようとしている「人型」モンスターを、龍麻は改めてまじまじと見ることができた。

「い、今さらなんだけど…本当〜に今さらなんだけど、サクマ組って、リビングデッド佐久間と関係あるよね…? これまではさらっと流して気にしないようにしていたんだけどね、多分無意識に」
「だから龍麻、そのリビングデッド佐久間って何なんだい!? 襲われたって言うのは!?」
「正確には襲われかけただけで、まだチューはされてないよ…」
「……とにかく、ゾンビ系のモンスターは等しく殲滅させる必要があるということだね【怒】」
「み、壬生…!?」
「龍麻はここにいて。僕がひとりでやるから」
「ちょ、ちょっと待って! 壬生、攻撃待って!!」

 壬生が龍麻を置いて炎の向こうにいるくさった死体の方へ歩み寄ろうとするのを、龍麻は縋りついて止めた! 壬生のやる気がアップ! 壬生の攻撃力も5上がった!!(おいおい…)

「龍麻、何で止めるんだ!? 大丈夫、この程度のモンスターなら5分もあれば…」
「そうじゃないんだよ、そりゃ壬生なら楽勝なんだろうけどさ! もしかしてこの人たち、人なんじゃない!?」
「は!?」
「いや、くさってるけど! どっからどう見てもくさってるんだけどっ! でも顔が、何か似てるよ! リビングデッド佐久間じゃなくてね!? いやあれにもちょっと似てるけど、そうじゃなくて、とにかくっ! この死体の人たち、俺に因縁つけてきたサクマ組の人たちに似てるんだよ! もしかしてサクマ組の人たち、呪いでモンスターにされちゃっただけなんじゃない!?」
「だけって…」

 壬生は龍麻の言いたいことを理解しつつも、ふっと肩から力を抜き、首を振った。

「龍麻。仮にそうだとしても、もう手遅れだよ。彼らは見ての通り、死人だ。死人は生き返らない。こんなくさった姿で彷徨って人を襲う存在でいさせるより、消滅させてあげる方が親切だよ」
「う…。で、でも、呪いを解いたら…」
「ここがどんな呪いにかかっているかも分からないのに? この先、本拠地へ行くまでにこのくさった死体、みんなかわしながら進むの?」
「やっぱり…倒さないとダメ?」
「ああ、駄目だよ」
「ううっ…でも…でも、何か…!」

 その存在に慣れてきたせいか。また、現在は攻撃されないために龍麻はすっかり恐れを潜ませ、大量のくさった死体を見つめた。 よくよく見たらこの死体、ただ闇雲に彷徨っているだけで、自分たちを襲うわけではないのでは?という気すらしてきた。 それに本当に自分が最初に思った通り、この死体たちが何らかの呪いにかかって「一時的」に「くさっているだけ」なら、元の善良…ではないけれど、悪徳なヤクザに戻れるかもしれないではないか(いいのか龍麻本当に)。

「そうだ! まものならしだ!」
「え…?」

 壬生がぽかんとする中、龍麻は良いことを思いついたかのように目を輝かせた!

「壬生、俺、まものならしが使えるから! それやってみる!」
「やってみるって…でも、龍麻…」
「炎の魔法解いて! 俺、彼らの前でやってみるから!!」
「……くさった死体にまものならしを使う勇者なんて聞いたことないよ」

 さすがの壬生も少し呆れ気味だ。
 しかし龍麻は何だかうまくいく気がして「いいから早く早く!」と壬生を急かした。

「…分かったよ。その代わり、それが効かなかったら、僕は攻撃するよ。いいね?」
「絶対大丈夫、何か自信あるっ!!」
「まったく君って人は……」

 壬生がため息交じりで腕を振ると、二人を囲んでいた炎の魔法はあっという間に消え去った。

「ぐおおおおお…!!!」

 その場を制されていたくさった死体が一斉に前進を始める!
 その動きは超スローながら、確実にその前に立ちはだかる龍麻へ向かった!!
 龍麻はそんな彼らに向けて両手を広げた。

「まものならし!! みんな、俺に従って!!!」
「………」
「………」

 くさった死体たちがぴたりとその動きを止めた。そして暫しその場から白い目玉(飛び出ている者もいる。グロイ)で龍麻を見ているんだかいないんだかの視線を向ける。
 そうしてその数秒後。

「ぐおおおおおお……!!!」

 大量のくさった死体がわらわらと龍麻めがけて襲いかかってきた!!
 龍麻はまものならしを失敗した!!!

「う、うわあああ!! 全然効かなかったー【悲】!」
「……効いても困るよ」

 壬生はボソリと呟くと、直ちにメラゾーマを放った!!!

「ギシャアアアアアーーーーーー!!!」

 大量のくさった死体はその場で瞬殺された!!くさった死体は炎に弱い!!!
 その場にいたくさった死体は賢者・壬生によって一掃された!!!

「……壬生すごい……」

 チャララララッチャッチャッチャー!!!
 龍麻はレベルが上がった!
 龍麻は何もしていないが、レベルを上げることができた!!
 しかしここで覚えられた魔法は何もない!!
 戦闘終了……。



 以下、次号…!!



  《現在の龍麻…Lv23/HP155/MP115/GOLD0》


【つづく。】
148へ150へ