「阿師谷龍麻です」と答えた場合



 龍麻が素直に名前を言うと、目の前の美男子さんはみるみるうちに表情を不快なものに変えていきました。

 そうして、吐き捨てるように言ったのです。
「貴方はあの阿師谷のお間抜け一族の方でしたか。…それで? 私の結界の中へ忍びこみ、また良からぬことをしようとたくらんでいるわけですか?」
「ええ…? い、いえ、僕は…」
「しかし正直驚きましたよ。伊周に貴方のような弟がいたとは。…まったく、腹の立つ……」
「に、兄さんを知っているんですか?」
「…? 知っているも何も。御門家と阿師谷家は古の頃より因縁のある敵同士ですよ。…まあ所詮あんな男など、この私の足元にも及びませんがね」
 そう言った「御門」と名乗る美男子さんは、龍麻のことをまじまじと見やってから、つまらなそうに言いました。
「…くどいようですが、貴方は本当に伊周の弟なのですか? 私にはどうも…信じ難いのですが」
「は、はい…。そりゃ…僕は兄さんのように、綺麗じゃないですけど…」
 恥ずかしそうに言う龍麻に、御門さんは眉をつりあげ龍麻のことを見やってから、何やら考えこむように扇子を1、2度振り仰ぎました。
 それから、意を決したように言ったのです。
「…で? 阿師谷の人間ならば、まさか何もせずにここから退散するとは考えていないのでしょう? 私と一戦交えてみますか」
「え?」
 不敵に笑う御門さん。けれど、龍麻にはこの自信満々の青年と対峙して勝つ自信などありません。けれども、戦わねば阿師谷の人間として父さんや兄さんたちにもひどい目に遭わされるでしょう。龍麻はただオロオロしてしまいました。



 そして…?

@ 御門と闘う
A  闘えない