「館の掃除」の場合



 家はとても広いので、龍麻が毎日雑巾がけをしてもすぐに汚れてしまいます。三男である麗司が龍麻をいじめるためにわざと泥を持ち帰るという理由もあるのですが。

 それでも、龍麻は一生懸命床を磨きました。
 そして、どれくらいの時間が経ったのでしょう?
「おい、龍麻」
 父親の導摩が部屋から出てきて、何やら不機嫌そうな顔で龍麻に声をかけてきました。
「何だお前は。まだ掃除をしておったのか、のろのろしおって。とにかく、それは後に回して、今からここに書いてあるものを森へ取ってこい」
「え…?」
「何だ、不満か?」
「い、いいえ。でも、僕が家から離れて外に出ても良いんですか?」
「ふん、あの森には滅多に人は来ないからな、大丈夫だろう。まあ、しかしそうだな。もし誰かに会っても、自分が阿師谷の人間だなどとは、間違っても言うなよ」
「はい…」
 父親に、これはあまりの言われようです。それでも龍麻はしょんぼりしながら、家を出ました。


 人気のない、昼間から暗い森の中を心細い足取りで進む龍麻は、けれども外の世界が珍しくて久しぶりに開放された気分になっていました。
 父親から頼まれた物は龍麻もよく知っている毒草でしたから、間違えて違う草を持って帰って怒られるという心配もありません。
 と、その時、ふと前方に見慣れたカバンが落ちているのを龍麻は見つけました。
「あ、あれは麗司兄さんのカバン! どうしてこんなところに?」
 龍麻は走り寄ってそのカバンを近くでよく見ましたが、確かに、麗司兄さんのものに間違いないようです。



 そこで龍麻は…?

@ カバンを拾って、麗司を探す 
A カバンを無視して、毒草探しを続行する