「カバンを拾って、麗司を探す」場合



 いつもこのカバンで殴られているよなあ…などと思いながら、それでも龍麻は両手で大事にその兄のカバンを抱え、周囲をきょろきょろと見回しました。

 兄さんの学校とは正反対のこんな場所に、どうしてこんなカバンがあるのかは分かりませんでしたが、それでも龍麻は無心になって兄さんの姿を探します。
 すると。
「あっ、麗司兄さん!!」
 しばらく進んだところに、何と兄の麗司がうつぶせになって倒れていました。慌てて駆け寄り兄さんを抱き起こすと、ごろりと向き直ったその顔はとても無残に打ちのめされ、あちこちから血が流れ出ていました。
「に、兄さん、一体どうしたの!?」
「く…僕が…この僕が、負けるなんて…」
 龍麻の存在に気づかず、うわ言のように麗司兄さんはそんなことをつぶやいています。何だかとても怖くなって、龍麻は辺りを不安そうに見回しました。
 すると、いつからそこにいたのでしょう。不意に龍麻たちの目の前に、すらりとした細身の青年が姿を現したのです。
「あ…」
 突然のことに驚き絶句する龍麻に、その青年は冷たい眼光をちらつかせながら、麗司兄さんを抱き寄せている龍麻に素っ気なく言いました。
「それ…君の兄さんなのかい?」



  その質問に龍麻は…?

@ 「はい、そうです」
A 「いいえ、違います」