「運命を切り拓く方法が載っている本」を開いた場合



 龍麻は自分のこの境遇について必ずしも悲嘆したり、絶望に陥ったりしたことはありませんでしたが、本当に時々「もし自分があと少しツイていたら、どんな風だったろう」と思うことはありました。だから、「自分の運命を自分で切り拓く」…それはとても素敵な事に思えましたが、龍麻にはその方法が分かりませんでした。最初からそんな機会を与えられる隙間すらなかったのですから。

 でもその本を開いた時。龍麻の運命は突然激しいものとなったのです。
「わっ…何…!?」
 本を開いたと同時に、ページから零れんばかりの光が溢れ、いきなり龍麻を引きずりこもうとし始めたのです!!
「わ、わああああーーー!!!」
 そうして龍麻はどんどんとその激しい渦の中に巻き込まれ、知らない何処かへと飛ばされてしまったのです。

 それから、どのくらいの時が経ったのでしょう。

「あ…! け、景色…!」
 何もないところから急に視界が開けたかと思った瞬間。
 龍麻は身も知らぬところに放り出されていました。吹き飛ばされ、地面に落とされる瞬間、何かがぐにゃりとクッションになって龍麻にしりもちをつかせることを防いでくれましたが、龍麻は不安で仕方ありません。
「こ、ここ…どこ…? 一体、どうしちゃったんだろ…」
「……そいつは、人の上からどいてから考えてくれや」
「わっ!?」
 いきなり下から声がし、龍麻は驚いて飛び退りました。龍麻を転落から防いだその何かは、人だったのです。突然どこからともなく降ってきた龍麻を、その人は身体全身で受けとめて潰れてしまったようなのでした。
「あ、あ、あの…! ご、ごめんなさい…っ!!」
「やれやれ。キレイなお姫様を抱きとめたってんならともかく、野郎を受け止めちまうとはな」
 そう言って頭をかいたその人は、とても身体の大きい、白い学ラン姿の勇ましい感じの男の人でした。
「けど、空から降ってくるなンてな。あんた、何者だい? まさか天使だなんて、下手な冗談言わないよな」



 それに対して龍麻は…?

@ 何も言えない
A 「ここは何処ですか」と訊ねる