(14) 「 あ、修司かい? ごめんなあ。今、ちょうど買い出しに行かせているんだよ」 バッティングセンター「アラキ」のマスターであり、修司の父親でもあるその人は、店に入ってきた友之を見るとすぐに察してそう言った。 「 たま〜に帰って来たと思ったら部屋にこもるか打ち込みするかだろう? いい加減、甘いだけの父親も卒業しなきゃなと思ってねえ」 にこにこと気さくな笑みを浮かべるマスターは、平日の昼先、突然店に現れた友之に対しても、「今は学校にいる時間だろう」とか「何かあったのか」といった事は一切訊かない。いつもそうだ。ただ普段通りの穏やかな態度で静かに友之を受け入れてくれる。またそれは友之だけでなく、家や学校が面白くないといった理由で自分の居場所を持たない多くの若者たちに対してもそうだった。何を言うでもない。ただ、共にいるだけ。けれど、そんなマスターの持つ空気はいつでも相手を落ち着かせる力を持っていた。 マスターのそんな人柄を慕って客は集まり、店はいつでも賑わっていた。 「 それにしても遅いな。もうすぐ帰ってくると思うんだけどね」 マスターはちらと背後の時計を見やって言った。 「 ………あの」 「 あれ、修司に用だろ?」 黙って頷くとマスターは再度にっこりと笑いかけ、自分が立つカウンターの背後を指差した。 「 上がって待っておいで。打ち込みしながら待っていてもいいけど、今はほら、割と混んでいるし。順番待ちしてまでやるのは、今日はやめておいた方がいいな」 「 え…」 「 何だか顔色悪いから」 「 あ……」 マスターの言葉に友之は途惑って思わず先の言葉を失った。 自分に熱がある事が分かったのだろうか。 「 はい…」 それでも友之はさり気ないマスターのその気遣いの声に何とか返事をし、店の奥から2階へ続く修司の部屋へと向かった。 気づけば、もう外へ飛び出していた。 部屋中を幾ら探ってみても、光一郎の母親を名乗る「新垣」という女性の居場所に関する手掛かりは掴めなかった。住所や電話番号をメモしたような紙片もない。勿論住所録にもそれらしい記載はなかった。ひとしきり家捜しを終えてしまうと、友之はしばらく自分が散らかしたままの部屋で茫然とした。まだあの声が耳に残っている。どうしてか、このまま諦めるという事はできなかった。 だから友之は自分がはたと気づいた時には、もう着替えて靴を履いていた。 修司は光一郎の家族の居場所を知っている。 修司がその事について話すのを嫌がっていたのは昨日会って分かっていたし、だからこそあの時は友之も深く突っ込んで訊く事はできなかった。 けれど、今は。 もうそんな事を構っている場合ではなかった。時間が経てば経つほど、何としてでも知りたいと思い始めていた。別段光一郎の母や弟に会ったからといって友之に特別話したい事があるわけではない。実際、本当に会ってしまったら言葉が出てこなくて困る事だろう。そういった場面も自分自身、友之は容易に想像できた。 それでも会ってみたかった。 自分とは繋がりのない、光一郎の家族に。 まだ身体は熱を帯びていたし、実際外へ出るのはきついと感じたが、友之は部屋の鍵を締めると一目散に「アラキ」へ向かった。 「 後でジュース持って行くな」 階段を昇って行く友之の背に、マスターの優しい声が響いた。 「 あいつの部屋の物なんか何でも好きに使っていいからな」 大した物ないけど、という苦笑めいた言葉がその後すぐに付け足される。 「 ………」 友之が修司の部屋を訪れるのは、勿論これが初めてではない。けれどそこはいつでも生活感がなく、人の匂いのしない無機的な空間だった。 あるのはドアを開いて真正面にある小さな窓。それにベッドと机、MDプレーヤーに幾つかの音楽ジャケット。以前は本棚の代わりにしていた小さなボックスが1つだけあったのだが、いつだったか修司が「邪魔だ」と言って父親の部屋に移動させてしまった。 だからそれは今もここにはない。 「 もう見るのも嫌だ」 より一層物のなくなったその場所で、修司は友之にどことなく自嘲的な笑みを浮かべそう言った事があった。 光一郎ほどではないにしろ、どちらかといえば読者家の修司は、家に篭もっている時などはよく本を開いていたし、学校へ行っていなかった頃の友之にはよく自分が読んだ歴史小説の話などをしてくれた。 けれどある一定の周期に入ると、修司は何故か急に「結構好きだ」と言っていた本までも拒絶する事があった。買ったばかりのまだ開いていないはずの本も「くだらない」と言っては人にあげたり売ったりした。何故急にそんな風になるのか、「気紛れだから」とマスターは言い、「何考えているのか分からない」と恋人の裕子は言った。 「 あいつは神経質だからな」 そう言ったのは光一郎で、友之にはこの感想が1番理解できないと思ったのだが、いずれにしても当の修司がそれについて何も語らないので、結局真相は分からないままだった。 いずれにしろ、そんな修司の部屋は本当に何もなかった。 「 あ……」 けれど、部屋に足を踏み入れて友之は思わず声を漏らした。 ふと目に入った、机上にある数枚の写真。 「 ………」 友之はそろそろとそこへ近づいていってその写真を手に取った。いつも何処か知らない土地の風景を撮って帰っては友之に見せてくれる修司。 けれどこれは初めて見るものだった。普段よく撮ってくる山や川の風景はそこにはなく、あるのは何処か雑多な雰囲気を感じさせる商店街の街並と、見知らぬ学校のグラウンドだった。さしたる珍しい風景というわけではなく、友之は次々とそれらに目を通し、そして最後の1枚で手が止まった。 そこには1人の少年が写っていた。 友之と同じくらい、否、むしろそれよりも少し上なのか。サッカーボールを持ってピースサインをしている快活そうな笑顔が印象的だ。少し赤茶けた髪の毛が首筋にまで伸びていて、それが気のせいか風になびくように揺れて見えた。動きのない写真のはずなのに、何故こうもこの少年は活き活きとして見えるのかが不思議だった。 しばらくの間友之はその写真を黙って見やった。 そうして、そういえば修司が風景でなく、人物を撮るなどという事が今まであっただろうかとふっと思った。 「 可愛いだろ」 「 ……!」 その時、突然背後から声をかけられ、友之はぎょっとして振り返った。 「 修兄……」 見ると、いつからそこに立っていたのだろう、部屋の入り口に修司が寄りかかるようにして立っており、何かを探るような目で腕組みをしたまま友之のことを見やっていた。 「 トモとはまた違うタイプの美人だよな?」 「 ………」 おどけたようにそう言った修司だったが、黙りこむ友之を見るとすぐに一旦口を閉じ、口調を改めて言ってきた。 「 今来たんだって?」 「 あ…うん……」 修司は頷く友之から視線を逸らすと何かを考え込むようにして俯き、それから薄く笑った。 「 昨日の今日でよく来られたな?」 「 え……?」 言われた意味が分からず訊き返すと、修司は喉の奥だけでくっと声を出した。 「 怖くなかったのかなって思ってさ」 「 どうして…?」 まだ理解できなくて友之は更に首をかしげた。けれど考え出した瞬間、友之は急に自らの身体の熱に気がついた。 「 ……っ」 熱が下がらないまま外に出てきたせいなのか、一気にこの店まで駆けてきたのがいけなかったのか。 それとも。 「 修……」 それとも、修司を見て熱くなったのか。 「 昨日、トモにはちょっと怖い事しちゃったかなあって思っていたんだよ」 いつもの明るい声で修司は言った。視線は友之に向けられてはいなかったけれど。 「 でも今日もこうして遊びに来られたところを見ると、トモにとってもあんな事は大した事じゃなかったのかな」 「 修兄……」 「 それとも…そんな事よりも大切な事があってここに来た?」 「 ………」 「 何かあった?」 「 あの……」 「 ん……」 「 あの…コウのお母さん…」 「 お母さん…?」 友之のたどたどしい声に修司はようやく顔を上げた。普段通りの優しい表情ではあったが、やはり昨日の陰鬱な雰囲気を引きずっている感じでもあった。友之はそんな修司から目を離せず、また手にした写真を放す事もできず、ただじっと固まったままデスクの前でぎこちなく立ち尽くしていた。 それでも何とか声は出した。 「 コウのお母さんが、電話を……」 「 電話? お前たちの家にか?」 「 うん……」 「 へえ…。トモ、電話出たんだ?」 全く違うところで意外だというような声を出して、修司はようやく背中を浮かすと部屋に入ってきた。それから友之の前にまで来ると、自分が撮ったのだろう写真を友之からすっと取り上げた。ちらとそれらを見てから、また机に戻す。 「 それで何だって?」 「 あの…引越しが早まったからって」 「 ……ふうん」 「 何の話なの?」 「 そのまんまだよ。今いる所から引っ越すんだって」 「 どうして」 「 どうして? それはその人の今の事情でだろ?」 どうしてそんな事を訊く、というような顔で修司は目を丸くしてから友之の頭をぐりぐりと撫でた。友之はその子供扱いの所作が嫌だったが、身体がぐらぐらと熱くなってきていて逆らう事ができなかった。 「 修兄…その人、今は何処にいるの…」 「 ………」 だから精一杯、それだけを、それだけが知りたいのだと友之は口に出して言った。 「 ………」 修司はすぐに答えなかった。 「 僕…コウのお母さんっていう人に会いたいんだ…」 「 ……どうして?」 「 分からない…けど…」 「 そう。なら光一郎に訊けばいいだろう?」 「 ………」 「 あいつは教えてくれない?」 ぐっとなって頷くと、修司はしばらく何事か考えていたが、すぐに思い立って友之の手を引っ張ると無理にベッドに座らせた。それから自分もその横に座るとふっと顔を近づけて不敵な笑みを見せた。 「 それでトモは俺にその場所を訊きに来たのか。俺がすぐに教えると思った?」 「 ううん…」 友之が正直に答え、首を横に振ると修司は面白そうな顔をして目を見開いた。 「 どうしてそう思った? 俺が大好きなトモの頼みを断ると思ったのか?」 「 うん…」 「 どうして」 「 修兄は…昨日だって、この話をしたがらなかったから…」 「 ………じゃあどうして今日また来た?」 修司は友之の片手で友之の手を握り、もう片方の手は友之の髪の毛をしきりに撫でた。今にもキスしそうな距離で友之は修司の吐息と視線が何だか窮屈で仕方なかったけれど、何とかその視線を自分も見つめ返して言葉を出した。 「 僕…知りたかったから…」 「 何を?」 「 コウの家族のこと…。僕以外の家族のこと…」 「 ………そう」 修司の声はひどく穏やかになっていた。部屋の入り口に立っていた時、そして昨日のどことなく不機嫌な様子とは明らかに変わっていた。いつもの修司に見えた。 「 ……っ」 けれど友之は緊張する身体から力を抜く事ができなくて、いつ修司はこの手を放してくれるのだろうとそればかり考えてどぎまぎしていた。 「 放してあげないよ」 しかしその真意を読み取っていたのか、修司は笑った。より一層その手に力をこめると、修司は更にもう一方の手で友之の頬を撫でた。 「 教えてあげてもいいよ。その代わり…トモが俺に昨日みたいなキスをくれたらね」 「 え……」 「 できる? 挨拶のちゅーだよ。できるだろ?」 「 ………修兄」 「 できる?」 「 ………」 空気は、表情はいつもの修司なのに。 「 修…」 やはりどこかおかしい大好きな「兄」の態度に、友之はただ途惑っていた。試しに掴まれている手を振り払おうとしたけれど駄目だった。 「 あ…」 「 トモ、駄目だよそんな顔しちゃ」 「 え……」 「 俺、またひどい奴になって…光一郎兄ちゃんに叱られちゃうよ」 「 あ…修…ッ」 止めようとした瞬間には、もうベッドに押し倒されていた。 「 修兄…っ」 「 可愛い…ね」 言われた瞬間、もう友之は唇を塞がれていた。 「 んぅ…ッ!」 突然の所作に友之は更にカッと熱が上がった。 嫌だと思った。光一郎にされたあの口づけと、違う。 違った。 「 簡単だな…」 そんな友之の心情を察しているのかいないのか、やがて唇を離した修司は素っ気無くただそれだけを言った。それからもう一度軽くちゅっと触れるキスをした後、修司は友之の額を撫でつけた。 けれど修司はふと何かに気を取られたようになると、その後すぐにすっと友之から離れた。 「 あ…?」 「 おい、修司。お前、ジュース取りに来いって言っただろ?」 マスターだった。 「 お前の分はないからな。ったく、たったあれだけの買い出しに何十分掛かったんだ、お前は?」 盆に1つだけ。オレンジジュースの入ったコップを持ってマスターは部屋に入りながらそう言ったが、ベッドに倒れて呆けている友之を見るときょとんとして口を閉ざした。 それから、一言。 「 トモ…具合、悪いのか?」 「 んーん。俺が押し倒したの」 「 ……はあ?」 息子のその台詞にマスターは呆気に取られた顔をしたものの、机にジュースを置くと眉をひそめ、大袈裟な様子で大きなため息を1つついた。 「 トモ、このバカはなあ。本当にバカだけど。まあ、あんまり気にするな。コイツが何考えているのかとか真剣に考えるとバカを見るぞ。だから考えなくていいから」 「 何それ」 「 そのままの意味だよ。お前の行動に意味なんかないだろ。いちいち考えたらキリがない」 「 ひどいね」 薄く笑い、修司はそれから友之を起こすと机にあったジュースではなく、先ほど取り上げた数枚の写真を友之に渡した。 「 今のご褒美に。あげる」 「 ………」 友之が黙ってそれを受け取ると修司は薄く笑った。 「 その子、なかなかイイ線いっているけどトモの方が百倍可愛いし? 俺はいらないから。お前が好きにしな」 「 おいおい、何の話だ?」 横からそう言った父親を無視し、修司は友之を見つめたまま後の言葉を続けた。 「 けど、俺は場所までは教えないよ」 「 え……」 「 その写真見て探せば…」 そうして修司は、後は全くその会話自体を忘れたというような顔をして、「今日は早く帰れよ」とだけ言うと踵を返し、部屋を出て行ってしまった。 「 ………」 友之は写真に写っている少年をもう一度見た後、何も言わずに自分も修司の部屋を出た。マスターが背後から何か心配そうな声を掛けてくれたような気がしたが、返事はできなかった。 この時はただ「アラキ」から離れたかった。昨日と同じで、やっぱり修司を怒らせてしまったと思った。 河川敷の道をとぼとぼと歩きながら、友之は修司がくれた数枚の写真を握り締めていた。 この写真の人物は、間違いなく光一郎の本当の弟だろう。とすると、この街並の写真は彼や彼の母親、つまりは光一郎の母親が住んでいる場所だと考えてほぼ間違いはなかった。 「 ………」 けれど、普段から学校と家の往復しかしていない友之に、見知らぬ他所の土地の場所を当てるなど、できるわけがなかった。修司とてそれは分かっていただろう。分かっていて、友之に正確な場所を教えてくれなかった。教えたくなかったのだ。 それでも、探すなとは言われなかった。それが友之には救いだった。 日が落ちるにはまだ早いが、吹く風は冷たい。 元々熱がある身で強引に出てきたから、気のせいか悪寒がひどくなっているような気がした。熱が上がったかもしれないと思う。ぼうとする視界の中、それでも友之はこのまま家に戻る気がしなくてただ機械的に足を動かし、人通りのまばらな平日の道を歩き続けた。 どうにかして、誰かに。 光一郎たちの家族が住んでいる場所を聞き出したいと思っていた。 「 あ……」 その時、友之はふとある人物の顔が思い出されて足を止めた。 「 ………お父さん」 思わずそうつぶやいていた。 知らないわけがない。元々十数年会っていなかった光一郎と母親を引き合わせたのはあの父だと聞かされた。一体いつから連絡を取り合うようになっていたのか、それは分からないが、ともかくもあの父ならば別れた妻の居場所を知っているだろう。 訊けばいいのだ。あの人から。そう思った。そしてその答えが自分の中で出来上がると興奮によるものか、はたまた別の感情によるものか、不意に心臓の音が高く鳴り響き出した。 「 ………」 けれど、答えを出した後も止まった足はなかなか前に進まなかった。 今さらあの家に行く事はためらわれた。光一郎によってあの場所から外へ連れ出してもらえた時、友之は本当に嬉しかった。あそこは最早自分の家ではないと思ったし、父との繋がりはとっくに潰えていると感じていたから。出来損ないの篭もりがちの息子に、否、後妻の連れ子にあの人はきっと辟易していた。 「 ……っ」 一旦そう感じてしまうと怖くなって、光一郎の母親の事を訊きたいという気持ちもたちまち萎えた。大体にして自分などが教えてくれと言ったところですぐに教えてもらえる保証はどこにもないではないか。 それどころかお前には関係ないと言われ、馬鹿にされ、冷たい眼で見下されるのではないか。 嫌だ。 「 行けない……」 思えば自分に帰る家など、もう何処にもないと友之は思った。 間の抜けた話かもしれない。けれど友之はこの時初めて気がついた。いや、以前は知っていた事だったのだから、思い出したといった方が正しいのかもしれない。 光一郎がいなければ、あのアパートのあの部屋がなくなれば、自分にはもう帰る所はない。父も母もいない。夕実もいない。この上光一郎が新たに現れたあの家族と何らかの繋がりを持って、もし自分を置いていってしまったとしたら。 何処にも、居場所なんてない。 「 ………ッ」 不意に友之は心臓を鷲掴みされるような痛みを感じ、胸を抑えた。 「 ふ…っ」 声が出ない。吐息のような声が微かに漏れ、友之はよろよろと道を外れて枯れ草がぽつりぽつりと生え残っている堤防の隅に腰を下ろした。 苦しい。息ができなかった。 「 …はッ…ぅん…!」 お前の兄貴なんてもういないと光一郎は言った。ひどく辛そうな顔をして、ひどく居た堪れない顔をして、光一郎はそう言った。 好きだと言ってくれたけれど。 「 嫌だ…」 苦しい。まだ息を吸えない。吸い込めない。上着をぎゅっと掴んだまま、友之はその場に倒れ込むと丸くなり小さくうずくまった。目をつむるとくらくらとしていた目眩はなくなったが、代わりにガンと何かに強く叩かれるような激しい痛みが脳天を襲った。 助けて。 声にならない声を出したが、それは誰にも届かなかった。 握っていた写真がはらりと地面に落ちた。薄っすらと目を開き、そちらへ目をやる。少年の明るい笑顔が友之の視界に飛び込んできた。意志の強そうな目、口許。ああ、少し光一郎に似ているかもしれないと思った。 「 ……コウ……」 弱い、弱い自分。こうして小さくなって光一郎に助けを求めるだけ。どうして良いか分からずに、何もできなくて怯えているだけの自分。 どうしてだろうと友之は思う。 光一郎のことを考えるだけで胸が苦しい。 1人になった時の事を考えると身体が熱くて冷たくて。 光一郎の熱が欲しい。そう思っていた。薄らいでいく思考の中で、友之はただひたすらに欲していた。 光一郎だけを欲していた。 |
To be continued… |
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